乙骨淑子『ぴいちゃあしゃん』
- 作者: 乙骨淑子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1985/12
- メディア: 単行本
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ヘロインの製造・密売に日本の軍人も関わっていること、勝っているとばかり思っていた日本があちこちで負けいくさをしていること……日本で思い描いていたのとはあまりに違う現実に、隆は直面することになります。
どんどん人が死んだり負傷したり狂ったりしますし、隆もたびたび怒りや悲しみや絶望を味わうことになります。しかし、彼はそれでも悠々とそびえ立つ「ぴいちゃあしゃん」(筆架山)に最初から最後まで惹きつけられていますし、死体が転がる雪原でも、雪をかきわけて草の芽が顔を出しているようすには≪きれいだな――≫と思わずにはいられません。そんな風に、人間以外のものの力が大きく、人間同士のどろどろにばかり拘泥していられないせいか、乾いた感じのする物語でした。