吉本ばなな 『ばななブレイク』 幻冬舎文庫

ばななブレイク (幻冬舎文庫)

ばななブレイク (幻冬舎文庫)

 このページのちょっと前だか後だかに書いている私の父は、確かに「批評ということ」をしていると思う。
 それは、人間が仕事にすることであるかぎり、そんなになまやさしい仕事ではない。
 それは、何をどう読んだかがそのまま、その人の魂を映す鏡になってしまうから。そこになにがしかの「普遍性」が感じられてなんぼの世界だから、小説を書くという、わずかでも嘘が通じる世界よりも厳しい。いつも魂の私小説をつづっているようなものだ。(P.226-227)