あたたかい水の出るところ

あたたかい水の出るところ

あたたかい水の出るところ

 胸の奥を重たいものがふさいでいて、どうにもこうにもそれが取れない時がある。木地雅映子の本は、何故かそういう時に、私の手元にやってくる。そしてその重たいものを、いったん、取り除いてくれる。

 早く死にたいといつも思っている。その時自分の置かれた状況とか、幸せとか不幸せとか、あんまり関係なく。この気持ちがどんどこふくらんだら、本当に死んでしまうかもしれない……とは、時々思う。「あと一押しで死ねるかもしれんな」という境目を感じることは、たまにある。
 子どもの頃も早く死にたかった。しかし、もしかしたら大人になりさえすればこんなこと思わなくなるかもしれないという希望があった(一方で、ちゃんとした大人になれる自信もないし、大人になる前に死にたいとも思っていたが)。ところが、成人して何年も経つのに、ちっとも死にたくなくならない。もしかしたら、子どもの私が目指した「ちゃんとした大人」に、まだなれていないだけかもしれないが。

 この世に、私に「生きててもいいよ」って言ってくれるものや人は、けっこう少ない。「生きてる価値ないよ」って言ってくるものや人は、けっこう多い。それに大きくて力が強い。被害妄想や思い込みも相当あるのだろうが、それでもそう感じてしまって、つぶされそうになることに変わりはない。

 つぶされそう、と言いながら、なんとかへらへら生きているのだが、一際「つぶされそう」な気分の時に、木地雅映子の本はとてもよく効く。「生きててもいいよ」と力強く言ってもらっている……というより、勝手に縋って、勝手にパワーをもらっている感じ。どっちでもいいか。とにかく、わりと効果があって長続きする、私にとってはありがたーいお薬なのであった。