SFセレクション2 ロボットvs人類
この中でも特に、「アンドロイド・アキコ」が、ジュブナイルが恋しい今の気分にぴったりきました。
東京宇宙空港は空から見おろすと、ぼうつきキャンデーのようなかたちをしています。
この出だしがとっても素敵。
ひとりむすめを亡くした科学者の父親が、むすめそっくりにつくったアンドロイド・アキコ。アキコ自身は自分がアンドロイドだということを知りません。はやりの歌やドラマに登場する男女の愛に憧れて、アキコは「月の上のガラスの町」に旅立ちます。(以下ネタバレ)
アキコは、月でめぐりあった愛する人を助けるために、人に銃をつきつけねばならないぎりぎりの状況下で、自分がロボットだということに気づきます。頭の中に、「ロボット法」がひらめくのです。
「ロボット法第一じょう。ロボットは、人間のいのちをとったり、からだをきずつけたりしてはならぬ。第二じょう、ロボットは、人間のめいれいにしたがわなければならぬ。ちゅうい。これをおかしたロボットは、じぶんの心臓と頭脳を、うしなうようにせっけいされている」(p.141)
そしてアキコは、自分が死んででも、愛する人を助ける道を選ぶのでした。
棺に入って戻ってきたアキコを、父親は生きかえらせようとするのですが、彼女が好きだったという月見草の花(月では「地球見草」と呼ばれる)を見た時、あることに気づきます。
思えば、自分の心のなかにありながら、自分自身気づかないものは、かずかぎりなくあるのでした。
「アキコ。わたしは、わたし自身のなかにあって、わたし自身が気づいていない、女とはこういうものだ、というかんがえによって、おまえをつくりあげたんだ。愛をつかんで死ぬならそれでもよい、という、ばかげたかんがえ、それがわたしのなかにあったんだ。いま、おまえを生きかえらせても、わたしのなかにある、さまざまの、わたしの気づいていない、かたよったかんがえが、やはりおまえをふしあわせにするだろう」(p.146)
この結末がたまらない。アキコの行動は父親の望むものではなかったけれど、彼女にそういう行動をとらせたのは、父親が彼女をつくる時しらずしらずのうちにセットしてしまった、彼自身の「女性」イメージだった、という……。