マイナークラブハウスの恋の行方

彼は大人にならない永遠の少年で、作者のアニムスなんですよ。自分から切り離された理想の男性ですね。自分の分身であるヒロインが、心理的な分身のアニムスと結びついてしまったら、それは自分が自分と結びつくことを意味する。それはつまらないでしょ。
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女の子がそういう恋をするのは必要なステップだと思うんです。真琴は染っちと出会わなければ、南にたどり着けなかった。でも染っちと結ばれるところで終わったのでは、空っぽで、何も産み出さない。恋愛小説を読んでいて、どれだけ過程が面白くても、結末がアニムスとのハッピーエンドだと虚しくて。(活字倶楽部2009夏号pp.64-65 木地雅映子インタビュー)

 マイナークラブハウスシリーズをここ最近ずーっと読み返していて、ついでにインタビュー記事までひっぱり出して読んでしまった。
 これを読むと、ぴりかと天野が結ばれることは決してないんだろうな、と思う。本編を読むに、ぴりかにとってのアニムスは天野だから。
 元々、ぴりかのアニムスは兄の「そーくん」だったのだろうけれど、その「そーくん」はいなくなってしまった。
 ちなみに、ぴりかの母親・かおりが、天野と言葉を交わした時の彼女の反応を見るに、天野と「そーくん」には似たところがあるらしい。

 聞きながら、頭がさらに混乱して来る。口の中が、苦い汁で、いっぱいになるような感じがする。
 この喋り方には、覚えがある。
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「何かお手伝いすることはありますか?」
 なにかおてつだいすることはありますか? ……ああ、やめて。そんな風に、わざとらしい言い方はしないで。いやみな口の利き方はやめて頂戴。どうしてもっと普通に喋れないの。いったいなにが不満で、ママにそんな他人行儀な態度を取るの?(『マイナークラブハウスへようこそ!』p.279 第五話 畠山かおり、目覚めて夢を見る縁より)

 ぴりかと天野には、この時代、この場所で生きていくのになくては困るものが欠けています(他の時代、他の場所だったら違ったかもしれない……けれどとりあえず、彼らは現代の日本に生まれてきてしまった)。二人がこれから生きていくのに必要なのは、それに理解を示し、サポートしてくれる人間であって、自分と同じような欠落を抱えた相手ではない(そういう相手では、サポート役になりえない)。だから今、惹かれあうあまりに激しく反発しあっている二人が、どうにかして結びつく……ということは、無いんじゃないかと思うのです。もしそうなったとしたら、二人が生き延びることは難しそうだから。とにかく、危機に瀕している子供をなんとか生き延びさせることを目指している(ように思える)この物語が、そっちへ向かうとは考えにくい。