覚えているうちに・その二

 夜明け前余震で目が覚める。真っ暗な中手探りでトイレに行って戻ってきて、こりゃまだ暗くて怖くてだめだな明るくなるまで寝てよう……と、決心して間もないうちに眠りについていた(こうして書いてみると、不安で眠れない人に眠気を分けてあげたいくらいよく寝ている)。
 朝目を覚ますとぴかぴかのいい天気で、部屋の中も明るくなっていたので出勤準備。元々休日出勤するはずの日だったから。まだ停電してるし職場が稼動するかわからなかったけど、徒歩圏内だし行ってみたほうがいいかと思って。しかし暖房なしで台所に立っているとすごいスピードで手足が冷えていくので参った。かじかんだ手で包丁使ったら親指けがしちゃったし。
 てくてく歩いて職場に行くと、既にけっこう人がいた。今この状態でやれるだけの仕事をやってくれたら助かるけど、まあこんな事態だし帰ってもいいですよ、とのお達し。家に一人でいても不安になるだけだろうし仕事してた方がいいかな、と残ったはいいものの、当然停電で暖房一切無いのでたいへん寒かった。寒いし暗くなったら作業できなくなるからと、仕事は半日で打ち止めされる。市役所の車がゆっくり走りながら流している「今のところ、停電復旧のめどは立っておりません」「市役所一回で携帯電話の充電ができます。ご利用ください」というお知らせを聞きながらてくてく帰る。
 家に帰り着き、湯たんぽを用意して、少しでもあったかいところにいようと陽の当たる窓際に陣取って本を読む。数時間後、電気が復活していることに気づく。「復旧のめどが立っていない」と聞かされたばかりだったから、こんなに早く復旧したことに、びっくり。東北電力さんありがとー、と思いながらこたつの暖かさをかみしめる。ケータイを充電し、パソコンを開く。自分の生存報告をしたり友人知人の安否を確認したり。
 それからしばらくして、遅延してたメールが続々とケータイに届く。しょうがないこととはいえ返信が遅れて心配をかけたのが申し訳ないやら、気にかけてもらえたのがありがたいやら。ぽちぽち返信。