獣の奏者 完結編

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者 (4)完結編

 あー、おもしろかった!
 どうか、みんなが幸せになってくれますように、と祈りながら最後までページをめくってしまいました。そうして最後まで読んで改めて思ったけれど――上橋菜穂子さんは、長い物語を終わらせるのが上手いなー、と思います。守り人シリーズでも他の一冊完結の物語でも、「ええー、ここで終わり?」とか「こんな終わり方?」って思ったこと、ないんです。もっとこういう場面を見たかったな、この人物の過去の話を詳しく知りたいな、もしも続きがあるなら読みたいな、ということはあっても。

 エリンの息子ジェシは、探求編開始時点で八歳。上橋作品で十歳前後の男の子、といえば思い浮かぶのは「守り人シリーズ」のチャグムですが、ジェシはチャグムとはまた違う魅力がありますね。いい子すぎるほどいい子だったチャグムに対し、ジェシは生意気で口が達者で、もっと乱暴な言い方をすれば「こまっしゃくれたガキ」です。いや、ジェシだっていい子なんですけど、「いるいるー、こういう憎たらしい口をきく小学生」ってな感じの物言いをするので。

 あと、上橋さんの描く世界の中で、人間ってすごく無力ですね。主要人物ががんばっても、変えられるのは世界の中ではものすごく小さい範囲内でしかない、ということが示される。いわゆるセカイ系と、読んだ時の印象が、逆だなと。