「ダメな相手の方が命が燃える可能性があるからね。でも、じゃあ、『普通にいいひと』はどうすればいいんですか」

「だって、わざわざ盛り上げなくたって、女性はその方向には情熱的ですよね」
「その方向ってどの方向ですか」
「悪い男とか、ややこしい関係とか、好きでしょう」
「そ、そうかな」
(中略)
「どうして女性たちは『普通にいいひと』に興味がないの。映画や漫画なんかでも、第一印象が『最悪のあいつ』と恋に墜ちるってのはよくあるけど、『普通にいいひと』と結ばれるってまずない」
「そうですね」
「ややこしい相手とのややこしい恋に悩んでる女性に『●●くんが貴女のこと好きみたいだけど考えてみたら』って『普通にいいひと』の名前を出すと、いきなりスイッチが切れたようになってしまう。それまでの生き生きとした苦悩のオーラが消えて『ああ、●●くん、うん』とか、もう細胞が全く反応していない感じ」(穂村弘『整形前夜』P.204-206)

 抜粋じゃおもしろさが伝わらんけど、ひとかけらでも伝えたいから抜粋しちゃいます。
 この章読んで、わたしの狭い狭い観測範囲の中だと、自分の好きな相手のことを「ダメ」とか「変」とか評する女性はいても、「普通にいいひと」だと評する女性はいないことに思い当たってもにょもにょしました。うーんうーん……ままならないものですね……

(普通にいいひと、でも、接していくうちに「ちょっと変」「ちょっとダメ」なとこくらいは発見されるんじゃないかとも思ったけど、それは主旨から外れるので割愛)