荻原規子 『RDG レッドデータガール』 角川書店

 泉水子は、いま内気な女の子として生きている人、かつて内気な女の子だった人、あるいは(女性でなくとも)内気な女の子的性質(こんな言い方が適切なのかどうかはわからないけれど)をいくらか持っている人にとっては、ずいぶん共感・感情移入が容易なキャラクターだと思います。

「(前略)もっと根本的なところでいじめられタイプだからだろう。たしかにときどきいる、いつもびくびくしていて、よけいに踏みつけたくなるやつ。そういうやつは、どこへ行ってもいじめられ役なんだ(略)」
 泉水子は固まったように立ちつくしたが、それは、彼がまっすぐ真実にふれたせいでもあった。教室の男子からぶつけられるような、底の浅い悪口ではない――うむを言わせないほど本当のことだけに、これほど残酷に響く言葉はなかった。それを目の前で言ってのける人間がいることも、信じられない思いだった。血の気がひいた。(P.116)

 うーん……ここまで「意地悪」な男の子キャラ、これまで荻原作品に登場しただろうか。『樹上のゆりかご』の夏郎……はもっとかわいげがあるし無邪気だし悪意がないもんなあ……。

 見られることが怖いのは、傷つけられるのが怖いからだ。見られることが恥ずかしいのは、自分で自分を否定しているからなのだ。このような自分がここにいることを、心の底から認めてはいなかった。これほど冴えない鈴原泉水子ではなく、他のものになりたかったからだ。
(わたしは、そう思っていながらも、本当は、こっそり求めていたのではないだろうか……本当は、ここにいるわたしをだれかにわかってほしいと。)(P.298)