ニコマスと癒し

 癒し、という言葉には複雑な感情を抱いている。
 「癒される」とか「癒し系」とか、言われることがわりと多かった。けどそれは、嫌ではないもののちょっぴり困惑することだった。だって私のどこをどう見たらそうなるのかちっともわからないし。でも、それが褒め言葉の意味で発せられたのはわかるので、嬉しくもあった。私が日々の生活の中でもらえる褒め言葉はそういう、「癒し系」とか「雰囲気がいい」とかそういうのばかりで……特に目に見えるような卓越した能力のないわたしは、そこにしか価値がないのだろう、と思っていた。それは自分じゃ自分のどこから発現してるのかわからなくて、いつ失われるのかもわからないものだから、怖くもあった。自分がちょっとでも、「そういう雰囲気だよね」というイメージを壊すようなことをしたら、見捨てられるような気がして。

 ただ、女の子に言われるぶんには嬉しくもあるのだが、異性に言われると困惑が深まるばかりであった。男性で「癒し」とかそういう風にわたしを評する(だけでなく私に伝えてくる)人って、なんだか、私を超えた偶像の「少女」「女性」を私の中に見てる気がするのだ。気がするだけだけど。

 そんなこんなで「癒される」という言葉は、自分で口にするのはどうにも抵抗のある言葉なのだけれど……ニコマスが自分にとってなんなのかを考えると、「癒し」という言葉しか出てこないんだよね……。うーん……。