孫娘の自分

池辺の棲家 (角川文庫)

池辺の棲家 (角川文庫)

 池のほとりで暮らす千亜子は息子を失っている。息子は高校生の時、「ぼくは皮膚呼吸ができなくなりました」と書いた紙片を残して山に消えたのだ。それが、今は孫娘を持つ「おばあちゃん」でもある彼女の、過去の話だ。


 久しぶりにこの本を読み直したら、ふと、叔父のことを思い出した。父の弟は交通事故で、19歳の時に亡くなっている。小さい頃、同居している祖父母にその話は何度か聞かされていたから、20歳になった時には「ああ、叔父を追い越して成人したんだな」という感慨みたいなものがあった。
 叔父が亡くなったのは私が生まれる前の年だ、というのは聞いていたけれど……そうか、祖父母からすると私は末の息子を亡くした次の年に生まれた孫娘なのか、と思い至った。
 息子を亡くすのがどれほど悲しいことなのか、孫が生まれるのがどれほど嬉しいことなのかは私の想像できる範囲を超えているけれど、初孫でもある私がすごく大事にされているのは確かだ。