桜庭一樹 『赤×ピンク』 角川文庫

赤×ピンク (角川文庫)

赤×ピンク (角川文庫)

最近のわたしの人気は、ちょっと異常だと思う。これだけ弱いのに、なぜこう名前を呼ばれるのだろう。みんなわたしになにを投影しているのだろう。男の人の生きる道には、わたしにはわからない、暗くて大きな一種の檻があるのかもしれない。わたしは彼らの身代わりになってそれと戦う、世界一無力な戦士なのか……。(P.62)

 わたしが困った生徒でいる限り、その先生は張り切って力になってくれた。新任のその先生にとって、問題児で、でも自分の力を求めている、複雑な家庭で育った生徒、は、必要な存在だったのだ。わたしはそれに応えて、暴れまくった。快感だった。個人に求められていることが。(P.96)

 ミーコの章で書かれていた心情に共感できすぎて痛かった。愛されたくて、社会が自分になにを求めているのか考える。その次に、個人に求められることに応えようとし始める。誰かが物語を欲してて、その中の役割が自分にわりあてられたら、それに全力で応えてしまう、というやつ。

 誰かの求めてる物語に自分が含まれていて、でもそれに自分がそぐわない時、すごく申し訳ない気持ちになってしまう。あなたの望んだとおりの人間になれなくてごめんなさい、という気持ち。