よしもとばなな 『王国 その3 ひみつの花園』 新潮社

王国〈その3〉ひみつの花園

王国〈その3〉ひみつの花園

 ここ数日何度か読み返した。

 私はお手伝いするのを辞める気はなかったけれど、何が起こっていつここを離れなくてはいけなくなるかわからない。だから、甘やかしすぎず、必要なときに必要なことをきっちりとしたい、そういうふうにとらえていた。甘やかすというのは何を意味するか? それは相手を離れられなくさせる黒い魔法なのだ。私は楓にそんなことをしたくなかった。(P.113)

 でも、やがて彼らは俺に条件をつきつけてくる。自分のものにならなければ、この毎日やこの笑顔はもうあげません、っていうふうに。それで俺がどれだけ傷ついたかわかる?(P.151)

 自分が登場人物の誰かと似ているわけでも似た状況に置かれているわけでもないのだけれど、随所にはっとするような言葉がある。
 ネタバレになっちゃうので詳述はしないけれど、「私たちは、(略)そういう設定の間だけ有効な関係だったのだ」「外側が少しでも介入したら、その世界はこわれてしまったのだ」という箇所が、特にぐさっと刺さってきた。
 ある設定の間だけ有効な関係、なら身に覚えがあるからだけれど。そうじゃない、設定が変わっても機能する関係を、築いていけるといいなあ、なんて思いつつ。

共感みたいなもの

http://d.hatena.ne.jp/kotohogi_k/20080830/p2
 自分の書いた「居心地の悪い好かれ方」ってエントリを思い出した。
 わたしは創作をする側じゃないし、向けられる目線の種類も違うだろうし、「共感した」って書くのも口はばったいから、みたいなもの、って書いておく。
 ……なんだかついでに、ごくごく個人的な事情なのだけれど、今なら整理できる気がしたので書いておく。むかしのはなし。
 本の感想がたくさん含まれている日記をネット上に書いているだけのわたしに、「やっと理想の女の子を見つけた」くらいの熱意を持った人がいたこと。むかしのわたしは、すごくすごく自分に自信がなくて、肯定的な言葉には無条件に嬉しくなってしまって、自分に向けられる好意はどんなものであれ(そこに居心地の悪さが含まれていたとしても)大事にしなくてはならないと思い込んでいたこと。それで、その人に求められたとおりの言動を(一時期とはいえ)してしまっていたこと、で、なんだか大変にややこしいことになったことがあった……のでした。
 いまだにわたしは、その人への、罪悪感がある。ひどいことをしたなあと。少しでも居心地の悪さを感じた時点で、すみやかに離れなきゃいけなかったなあと。そうしなかったから、中途半端に期待に応え続けたから、最終的にざっくり傷つけることになってしまったなあ、と。……偽善だ傲慢だと思われても仕方ないけれど、ほんとうにそう思ってる。